NordKapへの道程       ヨーロッパ一人旅↑   スカンディナビア半島、ノルウェー海岸線を南下

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スウェーデン・ノルウェー編  

No.19」海岸近くの川辺ではじめてご飯を炊く、とてもショッパイ!

No.20」NordKapへの道程

No.21」NordKap の台地(大地)の上で仮眠する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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No.21 ■はじめてだった、ヨーロッパ(ノルウェイ編)ひとり旅■  

           19xx年7月21日(日)小雨後曇り                 Nord Kapp→ Honningsvåg

19xx年7月21日 絵はがき(Nord Kapp発)

第二便、

ここにやって来た人は例外なく、少なくとも一枚の絵葉書を書くようだ。 ここでの不文律の規則となっている。そう言っても過言ではない。

ぼくもさっそく例外に漏れず、絵葉書を何枚か認めた。 ぼくから絵葉書を受け取る人は皆、特別な人と認定された人たちだ。

一枚ではこの感動を伝えるのに余りにも不十分と感じる人は二枚、三枚と 何枚もの絵葉書を思いつく人宛てに書いている。 この感動を、この喜びを分かち合おう、この誇りたい心も序に伝えて置こ う。わたしはとうとうこのヨーロッパの北の果てに来たのです、

と。何度も来られるような場所ではないだろう。特にヨーロッパ人にとっては、 勿論世界の人たちにとっても、一生に一度来られるか来られないか、そういった場所だろう。

人はなぜか地の「果て」へと行きたがるらしい。ようやくやってくることが出 来た。北の果てにやって来た、この事実を 全世界に向って発信、自分はここにやって来ている! そんな思いに駆られるのです。

見渡してみると、恰もこの一枚の絵はがきを書くためだけにNord Kappまで、 想像を絶する程たくさんの人々が時間を合わせていっぺんに世界各国からやって 来たといった様相を呈している。 ぼくもそんな一人ではあったが、ここに集まった人たちだけの、全体記念写真撮影でもやったら、 自分史にいつまでも残る記念日として、一人一人はどんなにか喜んだかも知れない。 何人集まっただろうか?150人前後だろうか。

風は強く、とても冷たい。日本人は見渡す限り、ぼく一人だけのよう。 かくして、本日ぼくは日本を代表してNord Kappに足跡を残す栄誉を得た。

午前2時になれば、皆、ここを去って行く。一日に何百枚とNord Kappから 絵はがきが全世界に向けて発送されているに違い ない。 明日からは一路、スカンジナビア半島を南下するのみ。

確かに! 確かに Nord Kappに来た!! それだけは大きな声で言える。聞こえないでしょうから、 大きくNord Kappと書いて置きます。

        それでは、お元気で!
           (午前零時25分 記す)

 

 

 

 

 

Midnight Sunはとうとう見られなかった。 だが見られたかのごとく文面は作 った。いや、これから午前2時までには見られるかもしれないと期待してそう 書いた。書いてしまった後では訂正も利かない。

 ここ Nord Kapp に来るのは白夜を見るため、それが当然となっている。ところ が見られなかった。尤も文面を読めば、文字通り、目的のものを見ることが出 来た、と読める筈。そう思わざるを得ないだろう。それを見たかった、見れな かったけれども見た、いや、見かかったという通常の願望が表現されたものと して読んで貰えれば良い。

 こんなにたくさんの人が集まるとは予想していなかった。相変わらず絵はが きを書く人々の集団だ。「絵葉書書き捲くり合戦」が今正に実施されている。 ここへ来て、一枚も絵はがきを書かなかった人がいるだろうか。ヒロ自身、日本 向けに、一枚だけでは書き切れず、もう二枚も書き上げてしまったではないか。

 



 

午前1時を過ぎていた。あと小一時間もすれば、この建物から閉め出されてしまう。 この建物の外、窪みで寝ると決めていたものの、閉店時間が迫るにつれ、再考している。

―― ここに今集まっている人たちはどこへと消えてしまうのだろう? Honningsvåg に予約してあるホテルへと真夜中の道を走って戻って行くのだろうか? ここ、台地でテントでも張るのだろうか?

―― 帰る車も次第に少なくなってくれば、便乗させて貰える可能性も少なくなってくる。 先に早くここを出発して、戻って行く車を待った方が良いのではなかろうか。

フランス語を話すスイスからの若者二人に話し掛けてみた。つまりそんな自 分一人だけの気使いから一時的に逃れたかった。  

そろそろ午前2時になんなんとしていた。さあ、どうしようか。先ほどまで の混雑ぶりも緩和され、さっきの雑踏振りがまるで嘘みたいだ。

 彼等達二人に促されるかのごとく、午前2時前、ヒロは下ることに決めた。来 た道を一人きりで戻って行く。車に乗せて貰えて、街に戻ることを内心期待し ていたが、、、と、前方からヘッドライトを煌々と照らして、ああ、ちょうど 時間に間に合うように、バスが二台登って来た。

―― そうか、建物に残っていた人たちは皆バスに乗って帰って行く予定だったのか?!

 しばらくしてから二台のバスはやって来た道をそのまま真夜中の乗客を乗せ て戻って行った。数台の車も後に続くかのようにして去って行った。

―― それにしても戻って行く車の数が少ないようだ。そうか、多くの車 は、建物の近くに駐車したまま車の中で一夜を明かす積もりなのか。それ もNord Kappのホテルに泊まる人たちだったのか。

 そういうことなのだろうと気がついた時、既に Nord Kapp からは遠く、とぼと ぼと前進しながらも何度か戻って行こうかとも思ったが、今更、また戻るとし ても、、、戻ったとしてもどうするのか、それに一睡もまだしていないことだ し、、、それよりもどこかで寝たい、休養を取りたい。もう何だか無性に眠い。 疲れた。もう戻ることは出来ない。遠過ぎる。難儀だ。

 何度かNord Kappの方を振り返った。戻りたいのか? あの建物の窪みの陰で 一夜を明かしたいのか? 今更、、、、いやいや、前進するしかない。

 しかし、見渡しても寝場所と言えるような格好なものは何一つないし、岩石 と草だけ、ひゅうひゅうと吹く風を遮るものが何もない、暗い殺風景な場所だ。 ただ一路、道がどこまでも続いているだけではないか。この坂を登りきって、 そして下れば、もしかして良い寝場所が見つかるかもしれない。進んでみよう  ――― そんなことをぶつぶつと心の中で言いながら歩き続けていた。

 

 気がついてみるとノルウェーの深夜の一本道、一人歩き続けて、すでに一時 間が経っていた。何処まで行っても身を寄せられそうな所はない。期待してい た車も来なくなってしまった。



――― こうなったら地面の上で寝ることにしよう。
      曇り空の下、雨になるのが心配の種であった。
 

 草地の上にビニールを敷き、その上に寝袋を広げ、風を防ぐかのように雨傘を広げ、 ちょっと横になった。一寸先は闇のような霧雨が本格的な雨になって しまったら、こんな所ではどうすれば良いのだろう。

 体全体に満遍なく行き渡った疲労のため、もう霧雨のことなどは気ならず、 すぐ慣れてしまい、いや無視するかのように忘れてしまい、ヨーロッパの最北 端である、Nord Kapp 近くの、だだっ広い台地を自分一人だけのベッドとして、 ヨーロッパ最北の夜空の下、二時間程寝込んでしまった。

 

 

 

 

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