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横浜港から出航、津軽海峡を通ってロシアへ。  ヨーロッパ一人旅↑ 列車の中でスイス人女性と知り合う。ナホトカ港に到着。


海外へ無料で行く極秘マニュアル

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オーストリアからのメール 

No.3  ■はじめてだった! ヨーロッパひとり旅・滞在■

19xx年6月27日(木)晴れ


 

■船旅最後の晩

午後9時、船内、ミュージックホールでは恒例のバンド演奏が始まった。今晩もショーの始まりだ。

今晩こそは、ロシア人の女性―― 昨晩、一人だけで隅の方でぽつんと寂しく腰掛けていた―― その受付の女性に話し掛けてみよう。そう決意していた。

 意外や、意外! 今晩のショーでは司会を受け持つ人であった。

自分のことは忘れ て夜の時間を楽しむため、ショーの開始前、つまりミュージックホールに乗り込んで行く前、景気付けにと、いや勇気付けにとロシアの酒、ウオッツカを注文して飲んた。一グラス100円。一気に口の中へと放り込んだ。液体が喉を伝って胃の中へと落ちて行くのが分かる。と途端に、一発で酔ったような気分。船の揺れも荷担していたかも知れない。頭の中、自分でないような自分になってくるかのようだ。 クラクラと感じ始める。

 

■日本の歌

演奏は次第に盛り上がってくる。ヒロは片足で調子を取りながら、何となく陽気になってくる。体全体を揺り動かし始める。もう一人のロシア人女性がマイクを手に取って歌い始める。美声と言えよう。日本の歌も歌い出す。ロシアの人も日本の歌を歌うのか、とちょっと驚いた。

 ♪夜明けの歌よ、

夜明けのうたよ
   あたしの心の きのうの悲しみ
   流しておくれ


   夜明けのうたよ
   あたしの心に 若い力を
   満たしておくれ


   夜明けのうたよ
   あたしの心の あふれる想いを
   判っておくれ


   夜明けのうたよ
   あたしの心に 思い出させる
   ふるさとの空

確か、岸恵子が歌っていた、それだ。まるで本人が歌っているかのように彼女は歌う。日本人の乗船客も結構いるというので、日本人客へのサービスということだろうか。

 

■彼女に話しかけた

簡単に話し掛けられるように、ショーの参加者の一人としてヒロは彼女の近くに腰掛けることにした。まだ少々躊躇(ためら)いがちの自分ではあったが、ロシアの酒を一杯煽ってきたことだし、勇気を振り絞って、彼女アンナさんが歌っている時に、別の彼女、つまり、お目当ての司会者の彼女に、 ヒロは恐る恐る、でも話し掛けた!

 「あの〜、彼女は日本語が分かるのですか?」

 ロシア語で質問をぶつけてみる。

日本語の歌を実に流暢に歌っているのでそう思ったのだ。知っているロシア語で、というかそれだけのロシア語文を会話帳から即効的に空で覚えて、言ってみただけ。

司会者の彼女、ロシア語でベラベラと答えてくれた。が、ヒロは全然分からない。当然。ロシア語など本気で勉強したことがない。

分からなくても全然気にならなかった。とにかく、昨日から長いこと思い続けていた彼女本人に話し掛けたのだから。英語が話せるということも確認出来た。名前はニーナさん。女性だからと年齢を別に隠すようなこともしない。29歳だと教えてくれた。イルクーツクに住んでいるとのこと。それからは取り留めのないことであったが英語で言葉を交わし合う。

 「次には Let’s kiss dance の踊りをやりますから」

そう教えてくれる。決まった進行プログラムがあるらしい。

歌が終わった後、ニーナさんは片手に持ったマイクを口に寄せて船の乗客、ホールに集まって来ている乗客に向かって、告げる。

 「さあ、皆さん、一緒に踊りましょう!」

ヒロも引っ張り出される。ヒロは彼女の後ろに回って、その両肩に両手を乗せて、そ〜ら、バンド音楽に合わせて、例のダンスが始まった。幾人かの人もダンスの列に加わった。

バンド演奏は続く。アンナさんは歌い続ける。ロシアの民謡だという「カリンカ」。カ〜リンカ、カ〜リンカ、カ〜リンカや、と。そこだけははっきりと聞き取れる。他の歌詞はロシア語で全然わからない。後で勉強しておこう、その時はそう思った。

 ♪カ〜リンカ、カ〜リンカ

  カ〜リンカ、カ〜リンカ

 「カリンカって何ですか?」ニーナさんに英語で訊く。

 「木の名前」

 「木の名前?」

 

その日の午後、彼女たちは今夜のショーの為に予行練習をやっていた。ヒロは船の中、何もすることもなくたまたまそこに居合わせた。リハーサルだったのだ。ホールにふらっと来るまでは自分の船室でヘミングウェイの英語本を読んでいた。お茶の時間になったのでホールへと出て来たのだった。

今、リハーサルのごとく、夜になって、ショーが進行中。

「さあ、あなた、一緒に踊りませんか?」

ニーナさんはヒロを誘う。日本人の癖でつい若干控えめ的な言辞を弄する。変に謙遜する必要などはなかった。ここは日本ではない。ヒロは古い日本人であることを止めようとしているのだ。まあ、一緒に、二人で向かい合って、ホールの、前の広い所へと出て、踊った。ポッコという踊り、彼女の見おう見真似で、手足を適当に振る。それだけのことであった。

 暫くして彼女ニーナさんもマイクを手にして歌う。

Once upon a time there was a tavern,

  where we used to raise a glass or two.

Remember how we laughed away the hours,

and dreamed of all the things we would do?

Those were the days, my friend,

 La la la la la la,

Those were the days, oh yes, those were the days.

ロシア語バージョンで、そして英語でと歌う。日本のテレビで、ラジオで聞いたことのある懐かしの音楽、曲目でもある。彼女も歌い方が上手い。

  Those were the days,

  Those were the days,

それはもう昔のことだった、それはもう昔のことだった、

と勝手にこの筆者は英文和訳しながら、そんな文句を口ずさんでいた。彼女の歌に合わせて一緒に歌っている積もりであった。離れ離れであったがデュエット で皆のために歌っているのだ、と勝手に思っていた。

 

 ■日本の男達、集まってくる

15分間の小休止。この時を捉えてあの(旧)国鉄の、中年おじさんも、我らグループ旅行のリーダーも彼女の前に集まって来る。自己紹介をしながら、我先にと彼女を独り占めにするかのように言葉を交わそうとする。

ヒロ一人だけの独占にしておこうと密かに思っていたのが、ヒロの快挙に刺激されてしまったのか、我らの日本人グループの男たちも皆やって来てしまい、 ヒロ自身まだ色々と言葉を交わしたかったのだが、経験不足丸出しのヒロ、適当な話題の選択に、また英語がうまく口から流れ出てこない。それでも何とか話そうと力んでいた、この外国旅行の初心者。

「ロシア語が出来ればアンナさんの歌ももっと分かり、楽しめたのに・・・」

そんなふうにヒロはニーナさんに向かってコメントするのであった。が、そう言ってしまった後で、「しまった!」と思った。アンナさんの歌だけでなく、ニーナさんの歌も、と付け加えなかった自分はうっかりだった、迂闊だった、と後で遅知恵が出てくるのであった。

 

さて、バンド演奏がまた始まったShow goes on. ショーは続く。船旅を楽しむ気分は最高潮に達していた。音量も大きく、足で、全身で調子を取ることも続けられる。手拍子も打つ。

ショーも終わりに近づくにつれ、ミュージックホールからは一人、また一人と立ち去って行くのが分かるが、昨夜よりも残っている人が多い。船旅最後の晩である。存分に楽しもう。そういうことなのだろう。

深夜、12時まで頑張っていた。彼女たちは既に立ち去っていた。ちょっと物足りない気持ちだった。

もっと、もっと話していたかったのだが・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

横浜港から出航、津軽海峡を通ってロシアへ。  ヨーロッパ一人旅↑ 列車の中でスイス人女性と知り合う。ナホトカ港に到着。

 

 

 

 

 

 

 

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