海外へ無料で行く極秘マニュアル 

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オーストリアからのメール 

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 Festに参加。真夜中の道、一人で歩いて帰った  ヨーロッパひとり旅↑ 働けど働けど   

 

No.42 ■はじめてだった、ヨーロッパ(スウェーデン編)ひとり旅■  

19xx年10月24日(水)曇り

  今日、セシリアから返事の手紙(10月19日付け)を受け取った。彼女とは列車の中で初めて会い、知り合った仲であった。

Dear Hiro,

I was very leased to get a ostcard from you and to hear that you are in Sweden. It must be already wintertime there with a lot of snow. Do you like skiing?

After I came back from my long Asian tri I started working as a guide for Student’s Travel Agency. First I went to the cote d’Azur in the south of France; the next tri was to Sain; and the last was the most beautiful a round tri in Sicily!

Last Saturday I returned. Well, traveling is over for a while. In wintertime I’ll teach again in a rimary school. I need urgently some money, because I sent an awful lot this summer! --- I often think of all the nice and interesting eole I met on my long tri. It was great exerience for me to see how Asian eole are and how they live. I think they are more oen, friendly and hositable than we Swiss eole are.

By the way, you told me in the train, that you wanted to come to Switzerland and work for a while. But I think for the moment it is very difficult to find a job, because we want to reduce the number of foreign workers.

But, anyway, if you are traveling through Switzerland you are very welcome in my house.

Hoing of seeing you, I send you all my best wishes. Dewamata. Sayonara Cecile.

                         

  「こんにちは、ヒロ。あなたから絵葉書受け取ってとても嬉しかったわよ。スウェーデンにいらっしゃるのね。そちらスウェーデンはたくさんの雪でもう冬でしょう、違う? あなたはスキー滑るのお好き?

わたしはアジアでの長旅を終えた後、学生旅行社でのツーリストガイドとして働き始めました。先ず南フランスのコート・ダジール。そして次はスペインへ。最後は最も美しかった、シチリア島一周の旅。

先週の土曜日に戻ってきました。そうね、これで旅することはしばらくは終わり。冬になったら小学校でまた教えることになります。緊急にお金が必要なので。この夏にはたくさんお金を使ってしまっ た! 長旅の途中で会った素敵な 、面白い人たちのことをよく思い出します。アジアの人たちはどうなのか、どのように暮らしているのか、それを自分の目で見る 、わたしにとっては大きな体験でした。アジアの人たちは私たちスイス人よりもオープンだし、友好的だし親切だわ。

ところで、あなた、(ロシアの)列車の中で言いましたよね。スイスにやって来て暫くは働きたいって。でも今の所、仕事を見つけることはとても難しいと思います。何故かという とスイスは外国人労働者数を減らしたがっているからです。   

とにかく、スイスを通って旅する予定でしたら、私の家にやって来て下さい。大歓迎よ。あなたにお会いできることを楽しみにしています。お元気で。デワマタ。さようなら。セシルより」  

  

 

  

19xx年10月25日(金)曇り、小雪

マサージ用の固いベッドの上に寝転がっている間に、階下、キッチンの隅、流し台横には洗い物の仕事が多量に溜まって、その大きな山全体は担当者の登場を今か今かと待ち構えていることだろう。

他には誰もいない。自分ひとりだけで夕食を素早く取った。そして直ぐに自分の持ち場に行った。夜の仕事の開始、午後6時。

案の定、コックたちが使用した大型の鍋や何なかやと山積みとなっていた。仕事を開始したらと早急に 洗浄して片付けることを要求されているといういわけではない。自分の能力の範囲内でやればよい。

 

         *       *

その晩の担当者は疲れていた。体がとてもだるい。立ち続けたままでの仕事、前屈体勢を保ち、両手 、両腕、上半身、いや、全身を絶えず緊張させながらひとつひとつの大型洗い物を片付けてゆく。

ああ、耐えがたいなああ、と感じる。身体的な疲労と相俟って、仕事から一時的にも逃れたいという意識が働く。でも頑張り続けている。

仕事開始前に寝転がって時間が来るまで待機していたことは体力の回復に寄与しなかったようだ。疲労感の倍加でしかなかった。

とにかく、この山をなくしてしまおう。両手、両腕を無心に動かし続けていた。山がなくなれば、しばらくは充分な休憩 を取れる。休む理由が見出されるのだ。

 

 

        *       *

皿洗いの機械のスイッチは切られた。彼女たちはこれから休憩を取ろうとしている。洗い場の仕切りの役目をしているガラスの反対側ではペルフーンも加わって彼女たちは腰掛けている。 喋っている。内容は聞き取れない。が、多分、話題は今晩遅くに始まるFest のことであろう。時々、笑い声が漏れてくる。

 

「コーヒーが飲みたいですか?」

以前、仕事を続けている最中でも、休憩中の彼女たちのひとりが訊きに来たものである。

夜の勤務中、ヒロはコーヒーを飲まないと彼女たちの一人は理解している。だからか、彼女は言ってこないのか。しかし、その時、ヒロはコーヒーを飲みたい気持であった。一緒に休みたい。

 

ノルウェー娘のおしゃべりが聞こえる。そのスウェーデン語は相変わらず立て板に水だ。本当に感心する。一方、この自分はどうなのか。未だに不自由を感じる。自分が言いたいことを頭の中で考え、それをスウェーデン語にしようと作文してそれを喋ろう、喋ろうとしている。喋ろうとしている が、機会を失って喋り出せなくなってしまっている。

 

        *       *

物腰の柔らかい、いかにもその仕事に向いているといった、眼鏡を掛けたウェイターが一人、ヒロの前に現れた。上下揃いの濃い青色をした背広とズボンを履いている。Fest 参加費、一人当たり 10クローネを徴収しに来たのだった。

ヒロは手帳の白いページの間から手の切れるような真新しいスウェーデン紙幣を取り出し手渡した。と同時にそのウェイターが差し出した小さなプラスチック製の入れ物から一枚、ダイダイ色の紙片を 探るようにして取り出した。席番号が印刷されているらしい。 

No.51。誰と誰の間に席を占めるのか、全然分からない。数字は既知だが、それ以外は何もかもが未知数。Festの席上、自分が占めるであろう席に思いを寄せる。Fest とはどんな風に展開するのだろうか。

 

 

        *       *

仕事を再開してから約一時間半、経っていた。ヒロは自分だけの休憩を取ることに決めた。

午後8時過ぎ、ちょうど間食の時間と合致した。小さな皿を片手に、スプーンで、フォークで自分が食べたいオードブルを選ぶ。両足を椅子の上に乗せ、ちょっと行儀が悪いと思ったが、そんな思いも無視、もうひとつの椅子には背を寄せ掛けるように して腰を降ろした。

あの黙ったままヒロを眺めていることが好きな女の子も腰を降ろして、そして食べたかったらしい。が、ヒロがそこにいることを知って、彼女は諦めてしまった。自分の持ち場、仕事場で立ったまま食べているではないか! 

全然関心がないわけではない。スウェーデンの女の子は異国からの日本人と同じ場所に腰かけることが恥かしいのか。異邦人は何か、噛み付くとでも思っているのだろうか。ヒロが近くにいることを知っている時の彼女のヒロを意識した、仲間同士の発言と声の調子、あたかもヒロに 聞き耳を立てて貰いたいといった風である。

しかし、彼女のスウェーデン語もヒロにとっては実の所、全然捕捉できない。彼女は幾つだろう。いままで彼女の年のことを思ったことがなかった。まだ20才にはなっていないようだ。もっとも女性の年を言い当てることは難しい。あのノルウェー娘が18才 なのだから。もしかしたら16、7才かもしれない。確かに彼女はかわいい顔をしている。が、まだ子供といった風に見える。色白、金髪、細身。

 

一人だけで休憩を取っている自分に何故か疲れを感じ、飽き飽きして来たので、再び持ち場へと戻って行った。仕事だ、仕事。ヒロが 戻って行ったのを待ち構えていたかの如く、暫くして彼女たちは自分たちだけの休憩を取りに、ヒロがいたところに集まってくる。

ヒロは黙々と両手、両腕を動かしている。仕事中は食器類が相手だ。体も一緒に動かしている。

 

彼女たちはヒロに構わず話している。

 

 

       *       *

先ほどのウェイターがまたヒロの前に現れた。もう一度入れ物の中から紙片を取り出すようにと差し出す。No.14。

Femton  フェムトン?」ヒロはスウェーデン語で言ってみる。

Fjorton フョルトン! 」ウェイターは訂正する。

 15?   いいや、14だ。

先ほどのNo.51の紙片は持って行ってしまった。

最終的にヒロの席番が決まった。

 

「フェムトン、いや、フョルトン だって!」

暫くしてから彼女たちの方からため息じみた声が漏れてきた。あの彼女と思われた。ヒロとテーブルを同じくしたかったのか。 隣の席に腰掛けたかったのか。同じテーブルではないので残念がっているのか。席の番号なんてどうでもよいのに。   

 

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